「奨学金」と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのはJASSOの貸与型奨学金だと思います。卒業後に返済が必要な、いわゆる「借りる奨学金」です。
一方、当サイトで奨学金48件を個別に調査したところ、そのうち41件(85%)が返済不要の給付型でした。日本全体で給付型奨学金が何種類あるのかは、当サイトでは確認できていません(調査ノート参照)。この記事で扱うのは、あくまで実際に調べた範囲の整理です。
この記事は、給付型奨学金の全体像(出どころ・金額の幅・応募方法の傾向)をつかむための入口ページです。金額の相場・所得制限・個人応募の詳細は、それぞれ個別のテーマ記事にまとめています。
「奨学金=借金」ではない
日本の奨学金には大きく3つのタイプがあります。
- 給付型 — 返済不要。もらえるお金
- 貸与型 — 卒業後に返済が必要。無利子(第一種)と有利子(第二種)がある
- 減免型 — 授業料や入学金が減額・免除される制度
このサイトで調査した48件の奨学金のうち、41件(85%)が給付型でした(うちJT国内大学奨学金は2026年7月の再調査で2020年度以降募集終了と判明)。JASSOの貸与型(第一種・第二種)が広く知られている一方で、給付型の制度は個別に探しに行かないと見つからないものが大半です。
給付型奨学金の3つの出どころ
調べた結果、給付型奨学金は主に3つのルートから提供されていました。
1. 国の制度(JASSO給付型)
JASSO給付型奨学金は、2020年度に始まった「高等教育の修学支援新制度」に基づく制度です。住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯(第I〜III区分)が中心ですが、2024年度に新設された第IV区分では多子世帯も給付の対象になり、令和7年度からは多子世帯の授業料等減免に所得制限がなくなっています(詳細は多子世帯の大学無償化の記事)。授業料減免とセットで支給されます。対象になれば金額が大きい制度ですが、所得制限が厳しく、すべての学生が使えるわけではありません。
2. 大学独自の制度
各大学が独自に設けている給付型奨学金です。このサイトでは6校の制度を調査しました。
- 早稲田大学 めざせ!都の西北奨学金 — 首都圏外の受験生対象、学部別定額45万〜70万円
- 慶應義塾大学 学問のすゝめ奨学金 — 入試出願前に申請する予約型、年額60万円(医学部90万円・薬学部80万円)
- 明治大学 特別給費奨学金 — 対象3学部の入試成績上位者、所得制限なし
- 東京大学、東北大学、立命館大学
※ 初版で掲載していた京都大学・大阪大学のページは、2026年7月の再調査で制度の実在・現行性が公式に確認できなかったため削除しました(大阪大学未来基金奨学金は平成24年度で終了)。
大学独自の制度は、その大学の在学生(または入学予定者)しか対象にならないため、外部からは情報が見えにくいのが特徴です。
3. 民間財団の制度
企業や個人が設立した財団が運営する給付型奨学金です。このサイトでは34件を調査しました(当初40件でしたが、公式再確認で貸与型と判明した5件と実在を確認できなかった1件を除外しています。また34件のうちJT国内大学奨学金は2020年度以降募集終了です)。
月額8万〜12万円の高額帯
- キーエンス財団 — 月額12万円、1500名程度募集
- 服部国際奨学財団 — 月額12万円
- 山田長満奨学会 — 月額12万円
- 日鉄鉱業奨学会 — 月額12万円
- マブチ国際育英財団 — 月額10万円
- G-7奨学財団 — 月額最大10万円
- 竹中育英会 — 月額8〜10万円
大学院・博士課程向けの高額制度
- 本庄国際奨学財団 — 大学院向け、月額18万〜23万円
- 旭硝子財団 — 博士課程月額25万円
- 中谷財団(旧・中谷医工計測技術振興財団) — 大学院のBME分野に特化、博士後期月額20万円
- 帝人久村奨学金 — 博士月額10万円
分野・対象を絞った制度
- 博報堂教育財団 — 教員志望の学生対象、私立月額10万円
- 川村育英会 — 高専生も対象、月額3〜7万円
- 鷹野学術振興財団 — 理工系限定、年額60万円
- 戸部眞紀財団 — 化学・食品科学・芸術・体育・経営の5分野限定で本人応募可、月額6〜7万円
- 大林財団 — 都市関連分野志望の大学1-2年生対象、月額5万円
- 重田教育財団 — 海外の大学・大学院への学位留学向け、年額22,000ドル
月額2万〜5万円帯・その他
- コカ・コーラ教育・環境財団 — 月額2万円
- 森下仁丹奨学会 — 月額4万円
- ダイオーズ記念財団 — 月額3万円、首都圏1都6県(2026年度から石川県枠も)で100名程度採用
- アイザワ記念育英財団 — 月額3.5万〜5万円
- 岩國育英財団 — 年額40万円、成績不問・所得制限なし
なお交通遺児・遺児支援の交通遺児育英会とあしなが育英会は、現行制度では無利子貸与型が主体のため給付型には数えていません(交通遺児育英会は月額のうち2万円が給付、あしなが育英会の全額給付は高校奨学金のみ)。
このほか、自治体が独自に運営する奨学金もありますが、こちらはまだ調査できていません。
金額・所得制限・応募方法 — 詳細は各テーマ記事へ
給付型41件のうち、募集終了のJT国内大学奨学金と、ドル建て・海外留学限定の重田教育財団を除いた39件の金額は給付型奨学金 金額比較表に横並びでまとめています。ここでは全体像だけ整理し、詳細はそれぞれのテーマ記事に譲ります。
金額の相場
月額は最低2万円から博士向け月25万円まで幅がありました。最も多いのは月額5万円で、相場(中心帯)は月3〜5万円です。2024〜2026年にかけては月額を大きく増額する財団が相次ぎました。集計の詳細は給付型奨学金の金額、月いくらが相場なのかにまとめています。
所得制限
調査した48件のうち32件(67%)に所得制限があり、16件(33%)にはありません。制度ごとの基準の違いと収入上限の具体例は奨学金の所得制限、どこまでが対象なのかに整理しています。
個人応募の可否
民間財団は大学推薦が前提の制度が多く、個人で直接応募できるのは募集中の民間財団33件(上記34件から募集終了のJT国内大学奨学金を除いた数)のうち14件でした。全件の洗い出しは個人応募できる給付型奨学金を全部調べたにまとめています。
「知られていない」理由
これだけの制度があるのに、なぜあまり知られていないのか。調べていく中で、いくつかの理由が見えてきました。
情報がばらばらに存在する
給付型奨学金の情報は、各大学・各財団・各自治体のウェブサイトにそれぞれ掲載されています。一覧でまとまった公式の情報源がなく、自分で探しに行かなければ見つかりません。
大学推薦制が多い
民間財団の奨学金は、大学の学生支援窓口を通じて推薦される形式のものが多数あります。学生が自分で調べて応募するのではなく、大学側から声がかかる仕組みのため、推薦枠の存在自体を知らない学生も多いと考えられます。
募集期間が短い
多くの制度は年に1回、数週間〜1か月程度の募集期間を設けています。タイミングを逃すと翌年まで申し込めません。高校生の場合、受験勉強と重なる時期に募集があることも多く、情報収集が後回しになりやすい状況です。
対象者が限定的
「理工系女性限定」「特定の出身地域限定」「特定の学部限定」など、対象者を絞った制度が多くあります。条件に合う人にとっては貴重な制度ですが、広く知られにくい要因にもなっています。
調べてみて気づいたこと
この記事の初版(2026年3月)のタイトルは「給付型奨学金、知られていないものだけで100種類以上ある」でした。しかし読み返すと、本文のどこにも「100種類」を数えた調査はありませんでした。当サイトが実際に調べたのは奨学金48件で、給付型はそのうち41件です。2026年7月の横断監査で初期記事の誤りを多数訂正した経験をふまえ、この記事も「数えていない数字をタイトルに掲げない」方針で書き直しています。
そもそも「給付型奨学金が全部で何種類あるか」を数えること自体、調べてみると簡単ではありませんでした。制度の数は固定ではなく動きます。調査した範囲だけでも、JT国内大学奨学金は2020年度以降募集を終了しており、あしなが育英会は現行制度では貸与型が主体になっていました。初版で掲載していた京都大学・大阪大学のページは、再調査で制度の実在・現行性が公式に確認できず削除しています。「何種類ある」と言い切るには1件ずつ現行の募集要項まで確認する必要があり、外形的なリストの件数はあてになりませんでした。
もうひとつの気づきは、給付型の情報が「探しても正確にたどり着きにくい」構造になっていることです。初版で「所得制限なし」としていた4財団は、公式の要項を再確認すると家計基準がありました。個人応募できるとしていたマブチ国際育英財団も、実際は大学推薦が必要でした。一覧でまとまった公式の情報源がないうえ、二次情報には誤りが混ざりやすい。当サイト自身がその誤りを再生産していた、というのがこの記事を運用して得たいちばん大きな教訓です。
調査ノート
調べたこと
- 給付型奨学金41件の金額・応募条件・選考方法を個別に調査(2026年7月22日の横断監査で全件を公式再確認)
- 国(JASSO)・大学独自・民間財団の3カテゴリに分類して整理
- 月額の範囲(2万〜25万円)、所得制限の有無、個人応募可否などのパターンを確認
- 情報が知られにくい構造的な理由を整理
調べられなかったこと
- 日本全体で給付型奨学金が何種類あるか。以前この欄に「日本学生支援機構のデータベースには約4,800件の奨学金が登録されている」と書いていましたが、2026年8月に確認したところこの数値の出典を示せませんでした。JASSOが公表しているのは制度の件数ではなく、奨学金制度を持つ大学364校・短期大学112校・地方公共団体等420団体という掲載団体数です(令和8年7月31日時点)。全体の制度件数を示す公的な集計は見つけられませんでした
- 47都道府県の独自奨学金(今後の調査課題)
- 各制度の実際の採用倍率・採用人数
- 申請から採用までにかかる期間の比較
- 複数の奨学金を併用した場合の実例
更新履歴
- 2026年7月31日: タイトルと構成を全面見直し(旧タイトル「給付型奨学金、知られていないものだけで100種類以上ある」の規模感に本文中の根拠がなかったため、実調査数ベースの記述に変更)。金額・所得制限・個人応募の詳細は各テーマ記事への案内に集約し、民間財団の紹介を種別ごとの箇条書きに再編
- 2026年7月22日: 横断監査の結果を反映(京都大学・大阪大学のページ削除、公式再確認で貸与型と判明した5件と実在を確認できなかった1件の除外、「所得制限なし」リストと個人応募リストの修正など)
出典
この記事で言及した各制度の出典は、個別の奨学金ページに記載しています。
- 給付型奨学金 金額比較表 — 39件の金額横断比較
- JASSO貸与型奨学金 比較表 — 第一種・第二種の比較
※ このサイトは個人が運営する調査ノートです。特定の制度を推奨するものではありません。 ※ 最新の募集要項は必ず各制度の公式ページでご確認ください。