「奨学金」と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのはJASSOの貸与型奨学金だと思います。卒業後に返済が必要な、いわゆる「借りる奨学金」です。
しかし調べてみると、返済不要の給付型奨学金は想像以上にたくさんありました。大学独自の制度、民間財団の制度、自治体の制度を合わせると、その数は数千種類にのぼるとされています。このサイトではそのうち49件を調査しましたが、それでもごく一部です。
この記事では、調べた内容を整理してまとめました。
「奨学金=借金」ではない
日本の奨学金には大きく3つのタイプがあります。
- 給付型 — 返済不要。もらえるお金
- 貸与型 — 卒業後に返済が必要。無利子(第一種)と有利子(第二種)がある
- 減免型 — 授業料や入学金が減額・免除される制度
このサイトで調査した51件の奨学金のうち、49件(約96%)が給付型でした。JASSOの貸与型(第一種・第二種)が広く知られている一方で、給付型の制度は数が多いにもかかわらず、あまり知られていないものが大半です。
給付型奨学金の3つの出どころ
調べた結果、給付型奨学金は主に3つのルートから提供されていました。
1. 国の制度(JASSO給付型)
JASSO給付型奨学金は、2020年度に始まった「高等教育の修学支援新制度」に基づく制度です。住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯が対象で、授業料減免とセットで支給されます。対象になれば金額が大きい制度ですが、所得制限が厳しく、すべての学生が使えるわけではありません。
2. 大学独自の制度
各大学が独自に設けている給付型奨学金です。このサイトでは8校の制度を調査しました。
- 早稲田大学 めざせ!都の西北奨学金 — 首都圏外の受験生対象、年額最大約70万円
- 慶應義塾大学 学問のすゝめ奨学金 — 入試前に申請可能、年額60万円
- 明治大学 特別給費奨学金 — 入試成績上位者が対象、所得制限なし
- 東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学、立命館大学
大学独自の制度は、その大学の在学生(または入学予定者)しか対象にならないため、外部からは情報が見えにくいのが特徴です。
3. 民間財団の制度
企業や個人が設立した財団が運営する給付型奨学金です。このサイトでは40件を調査しました。
月額が高い制度として、重田教育財団(学部向け月額20万円)、味の素奨学会(博士後期月額15万円)、旭硝子財団(博士月額15万円)、山田長満奨学会(月額12万円)、日鉄鉱業奨学会(月額12万円)、マブチ国際育英財団(月額10万円)、G-7奨学財団(月額最大10万円)、服部国際奨学財団(月額10万円)、竹中育英会(月額8〜10万円)、キーエンス財団(月額8万円)があります。月額2万円のコカ・コーラ教育・環境財団から、大学院向けで月額最大20万円の本庄国際奨学財団まで、金額の幅は広いです。教員志望の学生には博報堂教育財団(私立月額10万円)、高専生も対象の川村育英会(月額3〜7万円)など、対象を絞った制度も存在します。理工系限定の鷹野学術振興財団(年額60万円)、成績不問・所得制限なしの岩國育英財団(年額40万円)、森下仁丹奨学会(月額4万円)もあります。交通遺児・遺児支援の制度として交通遺児育英会やあしなが育英会もあります。大学院のBME分野に特化した中谷医工計測技術振興財団(博士後期月額20万円)、化学・食品科学・芸術・体育・経営の5分野限定で個人応募可の戸部眞紀財団(月額6〜7万円)、関東圏の大学限定で約100名採用のダイオーズ記念財団(月額3万円)、都市関連分野志望の大学1-2年生対象の大林財団(月額5万円)、アイザワ記念育英財団(月額3〜4.5万円)もあります。
このほか、自治体が独自に運営する奨学金もありますが、こちらはまだ調査できていません。
このサイトで調べた49件の給付型奨学金
49件の給付型奨学金の金額を横並びで比較した表を給付型奨学金 金額比較表にまとめています。
調べてみて見えてきたことを整理します。
月額の範囲
月額2万円(コカ・コーラ教育・環境財団)から月額20万円(重田教育財団・学部向け / 本庄国際奨学財団・博士課程)まで幅がありました。学部生向けの民間財団では月額3万〜8万円の範囲に多くの制度が集中しています。
所得制限のない制度
給付型奨学金の多くには所得制限がありますが、一部の制度には所得制限がありません。重田教育財団、旭硝子財団、服部国際奨学財団、似鳥国際奨学財団、トヨタ女性技術者育成基金、明治大学 特別給費奨学金、吉田育英会、本庄国際奨学財団、帝人久村奨学金、味の素奨学会、鷹野学術振興財団、岩國育英財団、戸部眞紀財団、中谷医工計測技術振興財団などです。
個人で応募できる制度
民間財団の奨学金は大学を通じた推薦が必要なものが多いですが、重田教育財団、キーエンス財団、似鳥国際奨学財団、服部国際奨学財団、交通遺児育英会、あしなが育英会、山田長満奨学会、岩國育英財団、マブチ国際育英財団、戸部眞紀財団は個人で直接応募できます。明光教育研究所も個人応募が可能で、成績要件がない点が特徴的です。
「知られていない」理由
これだけの制度があるのに、なぜあまり知られていないのか。調べていく中で、いくつかの理由が見えてきました。
情報がばらばらに存在する
給付型奨学金の情報は、各大学・各財団・各自治体のウェブサイトにそれぞれ掲載されています。一覧でまとまった公式の情報源がなく、自分で探しに行かなければ見つかりません。
大学推薦制が多い
民間財団の奨学金は、大学の学生支援窓口を通じて推薦される形式のものが多数あります。学生が自分で調べて応募するのではなく、大学側から声がかかる仕組みのため、推薦枠の存在自体を知らない学生も多いと考えられます。
募集期間が短い
多くの制度は年に1回、数週間〜1か月程度の募集期間を設けています。タイミングを逃すと翌年まで申し込めません。高校生の場合、受験勉強と重なる時期に募集があることも多く、情報収集が後回しになりやすい状況です。
対象者が限定的
「理工系女性限定」「特定の出身地域限定」「特定の学部限定」など、対象者を絞った制度が多くあります。条件に合う人にとっては貴重な制度ですが、広く知られにくい要因にもなっています。
調査ノート
調べたこと
- 給付型奨学金44件の金額・応募条件・選考方法を個別に調査
- 国(JASSO)・大学独自・民間財団の3カテゴリに分類して整理
- 月額の範囲(2万〜20万円)、所得制限の有無、個人応募可否などのパターンを確認
- 情報が知られにくい構造的な理由を整理
調べられなかったこと
- 日本全体で給付型奨学金が何種類あるか(日本学生支援機構のデータベースには約4,800件の奨学金が登録されているとされますが、給付型のみの内訳は未確認)
- 47都道府県の独自奨学金(今後の調査課題)
- 各制度の実際の採用倍率・採用人数
- 申請から採用までにかかる期間の比較
- 複数の奨学金を併用した場合の実例
出典
この記事で言及した各制度の出典は、個別の奨学金ページに記載しています。
- 給付型奨学金 金額比較表 — 49件の金額横断比較
- JASSO貸与型奨学金 比較表 — 第一種・第二種の比較
※ このサイトは個人が運営する調査ノートです。特定の制度を推奨するものではありません。 ※ 最新の募集要項は必ず各制度の公式ページでご確認ください。