奨学金を調べていると、「所得制限」という壁に最初にぶつかります。「うちは対象外かもしれない」と、調べる前にあきらめてしまう人もいるかもしれません。
実際のところ、所得制限はどうなっているのか。このサイトで調査した51件の奨学金について、所得制限の有無とその基準を整理しました。
所得制限がある制度、ない制度
51件の奨学金のうち、34件(約67%)に所得制限が設けられていました。残りの17件(約33%)には所得制限がありません。
「給付型奨学金=低所得世帯向け」というイメージがありますが、3件に1件は所得制限なしで応募できる制度でした。
所得制限なしの17制度
以下の制度は、世帯年収に関係なく応募できます(成績要件や分野制限などの他の条件はあります)。
| 制度名 | 月額目安 | 選考で重視されるもの |
|---|---|---|
| 重田教育財団 | 20万円 | 小論文・面接 |
| 中谷医工計測技術振興財団 | 12万〜20万円 | BME分野の研究 |
| 旭硝子財団 | 15万円 | 理工系の研究能力 |
| 本庄国際奨学財団 | 10万〜20万円 | 研究計画・人物 |
| 味の素奨学会 | 10万〜15万円 | 食・栄養の研究 |
| 山田長満奨学会 | 12万円 | 小論文・面接 |
| 服部国際奨学財団 | 10万円 | 成績・人物 |
| 帝人久村奨学金 | 5万〜8万円 | 理工系の成績 |
| 吉田育英会 | 8万円 | 研究計画・成績 |
| 博報堂教育財団 | 5万〜10万円 | 教員志望・人物 |
| 戸部眞紀財団 | 6万〜7万円 | 5分野の成績 |
| 鷹野学術振興財団 | 5万円(年額換算) | 理工系の成績 |
| 似鳥国際奨学財団 | 5万円 | 成績・人物 |
| トヨタ女性技術者育成基金 | 5万円 | 理工系女性 |
| 岩國育英財団 | 約3.3万円 | 人物重視 |
| 明治大学 特別給費奨学金 | — | 入試成績 |
| 立命館大学 西園寺記念奨学金 | — | 成績上位者 |
※ 各制度の詳細は個別ページをご確認ください。
所得制限のパターンを整理する
所得制限があるといっても、制度によって基準はまちまちです。調べた結果、大きく4つのパターンに分類できました。
パターン1: JASSOの区分制度(具体的な金額を公開)
JASSO給付型奨学金は、住民税の課税額に基づいて4つの区分(第I〜第IV区分)に分かれています。最も広い第IV区分は、4人家族(両親+本人+高校生)の場合で世帯年収約380万円以下が目安です。この数字は公式に公開されています。
JASSOの基準は他の制度でも参考にされることが多く、「JASSOの所得基準に準じる」と記載している民間財団もあります。
パターン2: 具体的な金額を公開している民間財団
大林財団は「世帯の父母の税込年収の合計が原則800万円以下」と明記しています。このように具体的な金額を公開している制度はわかりやすいのですが、調べた中ではごく少数でした。
パターン3: 「経済的困難」とだけ記載
多くの民間財団は、「学費の支弁が困難な者」「経済的理由により修学が困難な者」といった表現にとどまっています。具体的な年収の上限額が公表されていないため、自分が対象になるのかどうかが応募前には分かりにくい状態です。
該当する制度の例:
- 電通育英会 — 「経済的条件を満たす者」
- アイザワ記念育英財団 — 「学資の支弁が困難」
- ダイオーズ記念財団 — 経済的困難者対象
- コカ・コーラ教育・環境財団 — 「世帯の所得基準があります」
パターン4: JASSO基準に準拠
一部の民間財団は、「JASSOの第一種奨学金の所得基準に準じる」と明記しています。JASSOの基準は公開されているため、この場合は間接的に金額が推定できます。
- 森下仁丹奨学会 — JASSO第一種の所得基準に準拠
「所得制限あり」でも対象範囲が広い場合がある
「所得制限がある」と聞くと対象外だと感じるかもしれませんが、基準によっては広い範囲の世帯が対象になります。
JASSO給付型の第IV区分は世帯年収約380万円以下が目安ですが、大林財団は800万円以下です。民間財団の「経済的困難」の基準がどのあたりに設定されているかは、応募してみないと分からないケースも多いです。
「自分は対象外だろう」と決めつけず、まずは募集要項を確認してみることが大事です。
所得制限なしの制度の特徴
所得制限がない17制度には、いくつかの共通点がありました。
成績・研究能力で選考する制度
最も多いパターンです。旭硝子財団、味の素奨学会、帝人久村奨学金、吉田育英会、中谷医工計測技術振興財団など、理工系・研究系の財団に多く見られます。
入試成績で判定する制度
明治大学 特別給費奨学金は入試の成績上位者が自動的に対象になる、いわゆる特待生型の制度です。家計状況は選考に関係しません。
人物・活動実績で選考する制度
重田教育財団は小論文と面接で選考します。岩國育英財団も成績不問・所得制限なしで、人物重視の選考です。
分野・対象を限定する制度
トヨタ女性技術者育成基金は理工系女性限定、戸部眞紀財団は化学・食品科学・芸術・体育・経営の5分野限定です。対象を絞ることで、所得制限を設けない代わりに他の条件で選考しています。
所得制限と成績要件の関係
参考として、所得制限と成績要件の組み合わせを整理しました。
| 成績要件あり | 成績要件なし | |
|---|---|---|
| 所得制限あり | 多数(最も一般的なパターン) | あしなが育英会、交通遺児育英会など |
| 所得制限なし | 旭硝子財団、帝人久村など | 岩國育英財団、重田教育財団 |
所得制限も成績要件もない制度は非常に少数ですが、存在はしています。
調査ノート
調べたこと
- 51件の奨学金のrequiresIncome(所得制限の有無)を集計: 34件(約67%)が所得制限あり、17件が所得制限なし
- 所得制限の4パターンを分類(JASSO区分制/具体的金額公開/経済的困難表現/JASSO準拠)
- 所得制限なしの17制度の選考基準を整理(成績重視型/入試成績型/人物重視型/分野限定型)
- 所得制限と成績要件の組み合わせパターンを確認
- 具体的な所得上限額を公開している制度の特定(大林財団: 800万円以下、JASSO: 区分別に公開)
調べられなかったこと
- 「経済的困難」と記載している制度の具体的な所得上限額(大半が非公開)
- 各制度における所得基準の実際の適用状況(ボーダーライン上の扱い)
- 所得制限の緩和・厳格化のトレンド(年度による変更の有無)
- 共働き世帯・ひとり親世帯での基準の違い
- 資産(貯蓄・不動産等)を審査に含めるかどうかの制度ごとの違い
出典
この記事で言及した各制度の出典は、個別の奨学金ページに記載しています。
- 給付型奨学金 金額比較表 — 49件の給付型奨学金の金額横断比較
※ このサイトは個人が運営する調査ノートです。特定の制度を推奨するものではありません。 ※ 最新の募集要項は必ず各制度の公式ページでご確認ください。