この比較表について
このページでは、当サイトで調査した奨学金のうち大学院生(修士・博士)が使える給付型を横断で整理しました。学部生向けの情報は多いのに、院生向けは「探し方の地図」が意外とありません。調べてみると、院生向けは学部向けと相場も応募時期の考え方もまるで違いました。
対象は、①大学院専用(または院が主対象)の制度と、②学部と共通で院も応募できる制度の2グループです。各制度の詳細・出典は個別ページにまとめています。
※ 掲載金額は調査時点のものです。年度により変更される場合があります。 ※ 金額は代表的な支給額を記載しています。区分や条件により異なる場合があります。
まず前提: JASSOの給付型は大学院生を対象にしていない
JASSO給付型奨学金(高等教育の修学支援新制度)の対象は大学・短大・高等専門学校(4・5年)・専門学校で、大学院は含まれていません。国の給付型は学部までで、院生の公的支援は第一種(無利子貸与)・第二種(有利子貸与)と、大学院第一種の「特に優れた業績による返還免除」が軸になります(第一種の院月額は修士5万/8.8万円・博士8万/12.2万円)。
この「国の給付が院にない」空白を埋めているのが、以下の民間財団です。
比較表① 大学院専用・院が主対象の制度
| 制度名 | 対象 | 月額 | 採用規模 | 応募方式 |
|---|---|---|---|---|
| 旭硝子財団 | 修士1年・博士1年(日本国籍) | 修士・CMD 10万円/博士25万円 | 22名程度 | 推薦依頼大学院22校 |
| 本庄国際奨学財団 | 修士・博士(入学時30歳/35歳以下) | 18万〜23万円(支給期間別の選択制) | 若干名(2025年度実績: 応募216名・採用6名) | 個人応募(指導教授推薦書) |
| 中谷財団 | BME分野で博士号を目指す大学院生 | 博士前期12万円/後期20万円 | 11名程度(2025年度実績12名) | 個人応募・指定校なし |
| 帝人久村奨学金 | 博士課程進学予定者(理系) | 10万円 | 10名程度 | 個人応募(進学の約1年〜1年半前・予約型) |
| 竹中育英会 博士課程特別 | 博士進学予定の修士2年生(指定15大学) | 10万円 | 6名程度 | 財団へ直接出願(推薦調書要) |
| 吉田育英会 マスター21 | 修士進学予定の学部4年生(自然科学系) | 8万円 または学校納付金250万円以内 | 15名 | 推薦依頼校の予約採用 |
| キーエンス財団 大学院給付型 | 修士新1年生 | 12万円(2年間) | 100名 | 個人Web応募(2026年度開始) |
比較表② 学部と共通で大学院生も応募できる制度
| 制度名 | 院の月額 | 院の対象・条件 | 採用規模 |
|---|---|---|---|
| 日鉄鉱業奨学会 | 12万円 | 修士1年(指定16大学・資源/機械/電気/土木/化学系) | 2025年度採用83名(全体) |
| 服部国際奨学財団 | 12万円(2年間) | 修士30歳以下・博士35歳以下(指定19国公立大学) | 80名(2026年春季・全体) |
| 山田長満奨学会 | 12万円 | 首都圏の大学院(専門職大学院含む)・35歳未満 | 15名(全体) |
| 日本証券奨学財団 | 9万円(自宅)/11万円(自宅外) | 修士・専門職1年・博士1年(指定30校・25/28歳以下) | 40名程度(全体) |
| 三菱UFJ信託奨学財団 | 9万円 | 学校推薦制 | 新規140名(2025年度・全体) |
| 戸部眞紀財団 | 7万円 | 30歳以下・5分野(化学/食品科学/芸術学・デザイン学/体育学・スポーツ科学/経営学) | 2026年度新規127名(うち大学院92名) |
| 川村育英会 | 7万円 | 修士1年(化学・機械・電気電子・情報系等/募集48校) | 修士12名(2024年度実績) |
| 中村積善会 | 5万円 | 博士・修士・専門職(学校推薦・40才未満) | 支給約700名(全体・新規採用数は非公表) |
| アイザワ記念育英財団 | 5万円 | 大学院枠は5校に対して募集 | 大学院3名(2026年度) |
| 鷹野学術振興財団 | 年額60万円(月額換算5万円) | 修士1年(理工系12分野・製造業への就職希望が要件) | 5名(全体・2025年度応募100名) |
| 森下仁丹奨学会 | 4万円 | 全研究科(1大学1名まで・留学生除く) | 40名程度(全体) |
| ダイオーズ記念財団 | 3万円 | 首都圏1都6県+石川の大学院・33歳以下 | 100名程度(全体・首都圏枠) |
| G-7奨学財団 | 年間上限120万円(支給額は個別決定) | 大学院・専門職大学院(学校経由) | 110件程度(全体) |
※ 明光教育研究所は大学生までが対象で大学院生は対象外、電通育英会の大学院給付奨学金(月額10万円)は同会の大学奨学生だった人のみが応募できる継続型です。「院も使えそうな名前」でも対象から外れている例があるため、必ず個別ページと募集要項で確認してください。
比べて見えたこと
- 院専用の制度は金額の桁が違います。 学部向け民間給付型の中心帯が月3〜5万円なのに対し、院専用は月10万〜25万円が標準で、本庄(月18万〜23万円)は就職・アルバイトを原則不可とし、旭硝子や中谷も併用を強く制限します。「生活費の足し」ではなく「研究に専念するための生活費を丸ごと持つ」設計で、金額の大きさと拘束の強さがセットになっていました
- 応募時期が「進学前」に前倒しされる制度が目立ちます。 吉田は学部4年の春、帝人は進学の約1年〜1年半前、竹中の博士課程特別は修士2年時、日本証券・川村・日鉄鉱業は院1年次の春が入口です。院に入ってから探し始めると、主要な制度の多くはすでに締め切られています。院試の準備と奨学金の応募が同時進行になる、というのが学部との一番の違いでした
- 「学振・JSTに受かったらどうなるか」が院ならではの論点です。 旭硝子は特別研究員等と併給不可、本庄は学振特別研究員とJSTフェローシップだけを例外として認め、戸部はJSPS・JST等の採用者は年額42万円に減額と、各財団が公的フェローシップとの関係を要項に織り込んでいます。博士で公的支援を狙う人は、この連動を先に確認しないと後で選択を迫られます
- JASSO給付型が院を対象にしないため、「学部までは国、院からは民間」と支援の主役が入れ替わります。 学部で修学支援新制度を受けていた人ほど、院進学時にこの切り替わりを見落としやすい構造だと感じました
注意事項
- 金額は代表的な支給額です。区分・条件・年度により異なります
- 「採用規模(全体)」は学部生を含む制度全体の人数で、院生だけの枠ではありません
- 併用可否は制度ごとに大きく異なります(併用不可・減額条件付き可・制限なしまで幅があります)。各制度の詳細ページで確認してください
- 応募資格・締切は必ず各制度の公式ページ・最新の募集要項でご確認ください
※ このサイトは個人が運営する調査ノートです。特定の制度を推奨するものではありません。 ※ 最新の募集要項は必ず各制度の公式ページでご確認ください。
出典
各制度の出典は個別ページに記載しています。上の表の制度名リンクからご確認ください。
調査ノート
調べたこと
- 当サイト掲載48制度のうち、大学院生が応募できる給付型の抽出(院専用・院主対象7件+学部共通13件)
- JASSO給付型(修学支援新制度)の対象に大学院が含まれないことと、院の公的支援の構造(貸与+大学院第一種の業績返還免除)
- 院専用制度の応募時期の型(進学前の予約型が多数派であること)
- 学振特別研究員・JSTフェローシップとの併給規定(旭硝子・本庄・戸部で明文規定を確認)
- 「院も対象に見えて対象外」の例(明光=大学生まで、電通の院給付=自会の大学奨学生限定)
調べてみて気づいたこと
- この表を作るまで、院生向けの給付型は「学部向けの延長」だと思っていましたが、実際は応募時期・金額・拘束条件のすべてが別物でした。特に「進学の1年以上前に応募する」制度がこれだけ並ぶとは予想しておらず、修士1年の春・学部4年の春という2つのタイミングが院生の奨学金カレンダーの中心になることが、並べて初めて見えました
- 「採用規模」の数字は制度全体の人数と院生枠の人数が混在しており、そのまま比べられません。戸部(新規127名のうち院92名)やアイザワ(院3名)のように内訳を公表する財団は少数派で、表の1列を埋めるだけでも財団ごとに情報の粒度が違うことを実感しました
調べられなかったこと
- 各制度の院生の応募倍率(応募者数を公表するのは本庄・鷹野・戸部・川村など少数)
- 学校推薦型の制度における1大学あたりの推薦枠数
- G-7奨学財団の大学院生の学力基準(要項に数値基準の記載なし)
- 博士課程学生向けの公的支援(学振特別研究員・JST次世代研究者挑戦的研究プログラム等)の詳細(本表は民間給付型が中心。公的フェローシップは別の調査テーマとして残っています)