「奨学金は1つしかもらえない」と思っている人は多いかもしれません。しかし調べてみると、実際には制度によってルールが異なり、複数の奨学金を同時に受けられるケースもありました。
このサイトで調査した48件の奨学金ページから、併用に関する情報を整理しました(2026年7月22日の横断監査で全件の募集要項を公式再確認し、大幅に更新しています)。
併用の基本ルール
奨学金の併用可否には、統一されたルールはありません。お金を出す側(JASSO・大学・財団)がそれぞれ独自に規定を設けています。
つまり「奨学金Aと奨学金Bを併用できるか」を知るには、AとBの両方の規定を確認する必要があります。片方がOKでも、もう片方が禁止していれば併用はできません。
JASSOの併用ルール
JASSOの奨学金は併用に関する情報が比較的明確です。
JASSO給付型 + JASSO貸与型
- JASSO給付型 + 第一種(無利子): 併用可能。ただし給付型の支給区分に応じて第一種の貸与月額が調整(減額)される場合があります
- JASSO給付型 + 第二種(有利子): 併用可能
- 第一種 + 第二種: 併用可能(同時に2種類の貸与を受けられる)
JASSO + 大学独自・民間財団
JASSOの規定上、大学独自の奨学金や民間財団の奨学金との併用は制限されていません。ただし、大学側や財団側の規定で制限がかかる場合があります。
大学独自奨学金の併用ルール
- 早稲田大学 めざせ!都の西北奨学金: JASSO給付型と併用可。ただし併給調整があり、修学支援新制度の授業料減免額がこの奨学金単体の支給額に満たない場合、その差額までが併給されます
- 慶應義塾大学 学問のすゝめ奨学金: 修学支援新制度と併用可(給付額の上限は学校納付金から減免額を差し引いた金額)。入学後に他の奨学金を申請することも可能と明記
- 東京大学の2制度(学部学生奨学金・さつき会奨学金): いずれも「他の奨学金と併用することができます」と明記
- 東北大学 元気・前向き奨学金: 逆に併給不可型。他の給付型奨学金を受けておらず、かつJASSO給付奨学金の受給対象外の学生のみが応募できます
同じ「大学独自」でも、併用歓迎型(東大)と、他制度で拾えない学生を対象にする補完型(東北大)に分かれているのが分かります。
民間財団の併用ルール
初版では「併用可否を公表している財団は少数」と書きましたが、2026年7月の横断監査で各財団の募集要項・FAQまで読み込んだところ、想定よりずっと多くの財団が併用規定を明文化していました。
併用に寛容な財団
- 帝人久村奨学金: 「他の奨学金との併給が可能です」と明記。付帯義務もなし
- コカ・コーラ教育・環境財団: 「JASSOを含む全ての給付型奨学金との併用を認めております」+国・大学の授業料減免とも併用可という、調べた中で最も開放的な規定
- 三菱UFJ信託奨学財団: 公式Q&Aで「併給は可能です」と明記
- 重田教育財団: 他の奨学金制度への併願・利用中の応募も可(海外留学向け)
- 交通遺児育英会(無利子貸与型): 「併用可(日本学生支援機構との併用も可)」と明記
条件付きで併用できる財団
- キーエンス財団: 貸与型・授業料等減免とは併用可。ただし返済不要の給付型同士は不可(海外留学支援の奨学金は例外的に可)
- 服部国際奨学財団: 他の給付奨学金の受給額が月額10万円を超えなければ併用可
- 電通育英会: JASSOは給付型・貸与型とも併用可、すべての貸与型と併用可。ただし他のほとんどの給付型とは不可
- 吉田育英会: 可否表を公開。民間の給付型は金額不問で不可/国・地方公共団体・在籍大学の給付型は年間100万円以下なら可/貸与型は可(民間の貸与型を除く)/TA・RA報酬や授業料減免は制限なし
原則併用できない財団
- 似鳥国際奨学財団: 他の給付型奨学金(JASSO給付型を含む)との重複受給不可。貸与型・授業料免除/減額・一時奨励金は重複に該当しない
- 日本証券奨学財団: 他の奨学金等を受給・応募していないことが条件(JASSO貸与型と所属大学の授業料免除のみ例外)
- 本庄国際奨学財団: 日本学術振興会特別研究員・JSTフェローシップ以外の奨学金は受給不可
- 旭硝子財団: 特別研究員・大学フェローシップ・次世代研究者挑戦的研究プログラムとは併給不可。他機関から月額12万円を超える給付型を受けていないことが資格要件(併願自体は可)
よくある組み合わせパターン
| 組み合わせ | 併用可否 | 備考 |
|---|---|---|
| JASSO給付型 + JASSO貸与型(第一種) | 可(減額あり) | 第一種の貸与月額が調整される場合あり |
| JASSO給付型 + JASSO貸与型(第二種) | 可 | 制限なし |
| JASSO第一種 + JASSO第二種 | 可 | 同時貸与可能 |
| JASSO給付型 + 大学独自 | 多くの場合可 | 早稲田は併給調整あり。東北大のように給付併用不可の制度も |
| JASSO貸与型 + 民間財団 | 多くの場合可 | キーエンス・電通・似鳥・吉田等が貸与型との併用を明示的に認める |
| JASSO給付型 + 民間財団 | 財団による | コカ・コーラ・三菱UFJ・帝人は可、キーエンス・似鳥・電通は不可 |
| 民間財団 + 民間財団(給付型同士) | 制限が多い | 「他の給付型不可」の規定が多数。服部(月10万円以下なら可)や吉田(国公・大学系は年100万円以下可)のような金額基準型も |
| 大学院生 + 学振特別研究員等 | 制限が多い | 本庄・旭硝子・吉田が明示的に規定(本庄は学振・JSTのみ例外的に可) |
※ 上記はこのサイトの調査範囲で見えた傾向です。実際の可否は必ず各制度の規定で確認してください。
このサイトで調べた48件の併用情報まとめ
48件の奨学金のうち、併用ルールが公式情報で明文確認できたのは18件でした(JASSO3制度、大学4制度、民間財団11件)。
初版(2026年3月)ではこの数が4件しかなく、「併用情報は調べにくい」と結論づけていました。しかし今回、トップページではなく募集要項PDF・FAQまで読み込むと、多くの財団がきちんと規定を書いていることが分かりました。調べにくかったのではなく、当サイトの調べ方が浅かった、というのが正直な反省です。
残りの約30件は、公式サイト上で併用ルールが明確に確認できませんでした。各財団・大学への個別の問い合わせが必要です。
併用を考えるときのポイント
- まず各制度の募集要項・FAQを確認する — トップページに記載がなくても、募集要項PDFの「支給条件」やFAQに併用規定が書かれていることが多い
- 大学の奨学金窓口に聞く — 大学推薦制の奨学金であれば、大学の学生課が併用可否を把握していることが多い
- 「併用可能」と書いてなければ不可、ではない — 規定に記載がない場合は、問い合わせて確認する価値がある
- 申請時に正直に申告する — 他の奨学金の受給状況を聞かれた場合は、必ず正確に回答する
調査ノート
調べたこと
- 48件の奨学金ページにある「他制度との併用可否」情報を整理(2026年7月22日の横断監査で募集要項・FAQレベルまで公式再確認)
- JASSO3制度(給付型・第一種・第二種)の相互併用ルール
- 大学独自奨学金のJASSOとの併用状況(併用歓迎型と補完型の分化)
- 民間財団の併用規定の3類型(寛容型・条件付き型・原則不可型)
調べられなかったこと
- 併用規定が公式に確認できなかった約30件の内部規定
- 実際に併用している学生の事例・体験談
- 併用時の税制上の扱い(確定申告が必要になるケース等)
- 自治体の奨学金との併用パターン
調べてみて気づいたこと
初版で「併用情報はほとんど公開されていない」と書いたのは、トップページと制度概要ページしか見ていなかったからでした。募集要項PDFの「支給条件」の項やFAQには、「他の給付型奨学金との重複受給不可」「併給可能」といった規定がかなりの確率で書かれています。併用を検討するときは、概要ページで諦めずに要項の本文まで読む価値があります。また、給付型同士の併用を禁じる財団が多い中で、貸与型との併用はほぼどの財団も認めており、「給付1本+貸与で不足分を補う」が現実的な組み合わせの基本形になりそうです。
出典
この記事で言及した各制度の出典は、個別の奨学金ページに記載しています。
- 給付型奨学金 金額比較表 — 39件の金額横断比較
- JASSO貸与型奨学金 比較表 — 第一種・第二種の比較
※ このサイトは個人が運営する調査ノートです。特定の制度を推奨するものではありません。 ※ 奨学金の併用可否は必ず各制度の公式ページまたは窓口でご確認ください。