貸与型奨学金を借りるかどうか迷ったとき、「月々いくら返すことになるのか」が一番気になるところだと思います。
このサイトで調査したJASSO第一種奨学金(無利子)とJASSO第二種奨学金(有利子)について、借りた場合の返済額を具体的に計算してみました。
※ この記事の計算はすべて概算です。実際の返還額はJASSO奨学金返還シミュレーションで確認してください。
返済の基本ルール
まず、第一種と第二種の返済条件を整理します。
| 項目 | 第一種(無利子) | 第二種(有利子) |
|---|---|---|
| 利息 | なし | あり(上限年3.0%。2026年度の実績は固定方式2.7〜2.9%台・見直し方式1.9〜2.0%前後まで上昇) |
| 返還方式 | 所得連動返還方式 or 定額返還方式(選択可) | 定額返還方式のみ |
| 返還開始 | 卒業後7か月目 | 卒業後7か月目 |
| 最長返還期間 | 20年 | 20年 |
| 在学中の利息 | — | なし(利息は卒業後から発生) |
詳しくはJASSO貸与型奨学金 第一種・第二種 比較表をご覧ください。
この記事では定額返還方式で計算しています。所得連動返還方式(第一種のみ選択可)は、具体的な計算式がJASSOから公開されていないため、シミュレーションできませんでした。
第一種(無利子)の返済シミュレーション
第一種は無利子のため、返還総額=借りた金額そのままです。返還年数はJASSOの返還年数算出表に基づき、貸与総額に応じて決まります。
大学4年間(48か月)借りた場合の3つのケースを計算しました。
| ケース | 月額貸与額 | 貸与総額 | 返還年数 | 返還回数 | 月々の返還額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 最小額 | 20,000円 | 960,000円 | 10年 | 120回 | 8,000円 |
| 国公立・自宅通学 | 45,000円 | 2,160,000円 | 14年 | 168回 | 12,857円 |
| 私立・自宅外(最大額) | 64,000円 | 3,072,000円 | 18年 | 216回 | 14,222円 |
月額20,000円なら月々の返還は8,000円ですが、最大額の64,000円を借りると月々14,222円を18年間返し続けることになります。
無利子なので利息の心配はありませんが、最大額で借りた場合の返還総額は307万円です。22歳で卒業して返還を始めると、完済するのは40歳になります。
※ 返還年数はJASSO「奨学金返還年数算出表」に基づく概算です。
出典: 日本学生支援機構 返還期間(回数)と割賦金(2026年4月調べ)
第二種(有利子)の返済シミュレーション
第二種は卒業後に利息が発生します。在学中は無利子ですが、貸与終了後から利息がつきます。
利率は貸与終了月に決定されます。かつては年0.5%〜1.0%程度で推移していましたが、2024年度以降は上昇が続き、2026年度は利率固定方式で2.7〜2.9%台、利率見直し方式で1.9〜2.0%前後になっています(上限は年3.0%。出典: JASSO 貸与利率一覧)。
そこでこの記事では、**見直し方式の目安として2.0%、固定方式の目安として2.9%**の2パターンで計算しました。計算方法は元利均等返還(毎月の返還額が一定になる方式)です。
2026年7月更新: 初版(2026年4月)は「近年の実績0.5%〜1.0%」を前提に計算していましたが、この数字は旧実績でした。現行の利率水準に合わせて全シミュレーションを引き直しています。
2026年7月31日更新: 月額80,000円ケースの表の直後に、利息総額が借入額に占める割合の読み取りを追記しました。
月額50,000円を4年間借りた場合
貸与総額: 2,400,000円、返還期間: 15年(180回)
| 利率 | 月々の返還額 | 返還総額 | うち利息 |
|---|---|---|---|
| 2.0%(見直し方式の目安) | 約15,400円 | 約2,780,000円 | 約380,000円 |
| 2.9%(固定方式の目安) | 約16,500円 | 約2,963,000円 | 約563,000円 |
240万円借りると、固定方式の現行水準では利息だけで約56万円。借りた額の2割以上を利息として上乗せで返す計算になります。
月額80,000円を4年間借りた場合
貸与総額: 3,840,000円、返還期間: 20年(240回)
| 利率 | 月々の返還額 | 返還総額 | うち利息 |
|---|---|---|---|
| 2.0%(見直し方式の目安) | 約19,400円 | 約4,662,000円 | 約822,000円 |
| 2.9%(固定方式の目安) | 約21,100円 | 約5,065,000円 | 約1,225,000円 |
384万円の借入に対して、利息総額は見直し方式の目安(2.0%)で約82万円と借入額の約2割、固定方式の目安(2.9%)では約123万円と約3割になります。同じ借入額・同じ返還期間でも、方式の違いだけで利息に約40万円の差が出る計算です。
月額120,000円を4年間借りた場合(最大額)
貸与総額: 5,760,000円、返還期間: 20年(240回)
| 利率 | 月々の返還額 | 返還総額 | うち利息 |
|---|---|---|---|
| 2.0%(見直し方式の目安) | 約29,100円 | 約6,993,000円 | 約1,233,000円 |
| 2.9%(固定方式の目安) | 約31,700円 | 約7,598,000円 | 約1,838,000円 |
最大額の120,000円を固定方式の現行水準(2.9%)で借りた場合、20年間で支払う利息は約184万円。576万円借りて約760万円返す計算です。初版で前提にしていた利率1.0%なら利息は約60万円でしたから、利率の上昇で利息負担が3倍になったことになります。
※ 利率は貸与終了時に決定されるため、この記事の計算とは異なる場合があります。正確な返還額はJASSO奨学金返還シミュレーションでご確認ください。
出典: 日本学生支援機構 奨学金の返還(2026年4月調べ)
第一種+第二種を併用した場合
第一種と第二種は併用して借りることができます。併用した場合、卒業後は2つの返還が同時に走ります。
第一種 月額45,000円 + 第二種 月額50,000円の場合
在学中の貸与月額: 合計95,000円
| 項目 | 第一種(無利子) | 第二種(利率2.0%) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 貸与総額 | 2,160,000円 | 2,400,000円 | 4,560,000円 |
| 返還月額 | 12,857円 | 約15,400円 | 約28,300円 |
| 返還年数 | 14年 | 15年 | — |
| 返還総額 | 2,160,000円 | 約2,780,000円 | 約4,940,000円 |
卒業後の返還スケジュールはこうなります。
| 期間 | 返還中の奨学金 | 月々の返還額 |
|---|---|---|
| 卒業後1〜14年目 | 第一種+第二種 | 約28,300円 |
| 卒業後15年目 | 第二種のみ | 約15,400円 |
14年間は毎月約28,300円の返還が続き、第一種が完済した後も第二種の返還がもう1年残ります。固定方式の現行水準(2.9%)なら合計はさらに月1,000円ほど増えます。
手取り月収に対する返済負担
返還額が実際の生活でどれくらいの負担になるのか。大卒初任給の手取りと比較してみました。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2025年の大卒初任給は約228,000円です。社会保険料(約15%)と所得税・住民税を差し引くと、手取りは約180,000円が目安になります。
| ケース | 月々の返還額 | 手取りに占める割合 |
|---|---|---|
| 第一種 20,000円(最小額) | 8,000円 | 約4.4% |
| 第一種 45,000円 | 12,857円 | 約7.1% |
| 第一種 64,000円(最大額) | 14,222円 | 約7.9% |
| 第二種 50,000円(利率2.0%) | 約15,400円 | 約8.6% |
| 第二種 80,000円(利率2.0%) | 約19,400円 | 約10.8% |
| 第二種 120,000円(利率2.0%) | 約29,100円 | 約16.2% |
| 併用 45,000円+50,000円 | 約28,300円 | 約15.7% |
新卒の生活費の参考として、総務省「家計調査」による単身勤労世帯(34歳以下)の平均支出を見ると、家賃が約40,000〜60,000円、食費が約35,000〜45,000円、光熱費・通信費が約15,000〜20,000円です。
手取り180,000円から家賃50,000円・食費40,000円・光熱通信費18,000円を引くと、残りは約72,000円です。ここから奨学金の返還額を引いた金額が、その他の支出に使えるお金になります。
※ 初任給は企業規模・業種・地域によって大きく異なります。上記はあくまで全国平均の目安です。
出典: 厚生労働省 賃金構造基本統計調査(2026年4月調べ)
返済が困難になった場合
JASSOには、返還が困難になった場合の救済制度がいくつか用意されています。
減額返還
月々の返還額を3分の2・2分の1・3分の1・4分の1のいずれかに減額し、そのぶん返還期間を延長する制度です(適用期間の上限は通算15年)。返還総額は変わりません。
例えば月々12,857円の返還を1/2に減額すると、月々約6,429円になりますが、返還期間が14年から28年に延びます。
返還期限猶予
経済的に困難な場合や傷病の場合に、返還を一定期間(最長10年)猶予できる制度です。猶予期間中は返還が止まりますが、猶予終了後に返還が再開されます。
返還免除(業績免除は大学院・第一種のみ)
大学院で第一種奨学金を借りた場合に限り、特に優れた業績を挙げたと認められると、貸与額の全額または半額が免除される制度があります。学部生・第二種には適用されません。なお、死亡または精神・身体の障害により返還できなくなった場合の返還免除は、第一種・第二種の両方に適用があります。
延滞のリスク
返還を延滞すると、延滞金が課されるほか、個人信用情報機関に登録される場合があります。これにより、クレジットカードの作成や住宅ローンの審査に影響が出る可能性があります。
出典: 日本学生支援機構 返還が難しくなった場合(2026年4月調べ)
調べてみて気づいたこと
無利子でも金額は大きい
「第一種は無利子だから大丈夫」と思いがちですが、月額45,000円を4年間借りると総額は216万円です。利息がないのは確かに有利ですが、216万円という金額そのものの重さは変わりません。「無利子=負担が軽い」ではないということを、計算して改めて実感しました。
利率の前提が3か月で崩れた — 現行は「ほぼ上限3%」の世界
この記事の初版(2026年4月)は「近年の実績0.5%〜1.0%」を前提に計算していましたが、2026年7月の再確認で、この数字自体が数年前の水準だったことがわかりました。現行の固定方式は2.9%台で、上限3.0%にほぼ張り付いています。月額80,000円のケースで利息総額は、利率1.0%なら約40万円、2.9%なら約123万円。利率の確認を怠ると、利息の見積もりが3倍ずれるということです。貸与型を検討するときは「借りる時点の最新利率」を必ずJASSOの貸与利率ページで確認する必要があります。
見直し方式と固定方式の差も大きくなった
低金利期には固定と見直しの差はわずかでしたが、現在は固定2.9%・見直し1.9〜2.0%と1ポイント近い開きがあります。月額80,000円のケースで利息総額の差は約40万円。どちらの方式を選ぶかが、かつてより重い意思決定になっています(見直し方式は将来さらに上がるリスクも下がる可能性もあります)。
最大額を借りると手取りの約16%が返済に消える
第二種の最大額(月額120,000円)を4年間借りると、見直し方式の現行水準(2.0%)でも毎月約29,100円の返還が20年間続きます。これは新卒の手取り月収の約16%に相当します。家賃と食費と光熱通信費を引いた残り約72,000円のうち、さらに約29,100円が返還に消えるので、自由に使えるお金は約43,000円になります。
併用すると返済の終わりが見えにくい
第一種と第二種を併用した場合、2つの返還期間がずれます。「第一種が終わったと思ったら、第二種がまだ1年残っている」という状態になり、「完済」の時期がわかりにくくなります。併用を考える場合は、両方の返還期間を事前に確認しておく必要があると感じました。
所得連動返還方式は計算できない
第一種では「所得連動返還方式」を選ぶことができ、所得が低い時期は返還額が少なくなるという制度です。しかし、具体的な計算式はJASSOから公開されていません。つまり、卒業前の時点では「所得連動を選んだら月々いくらになるのか」を事前にシミュレーションできません。これは調べていて困った点でした。
調査ノート
調べたこと
- JASSO第一種(無利子)の定額返還方式による返還年数と返還月額(3ケース)
- JASSO第二種(有利子)の元利均等返還計算(3ケース × 2利率。2026年7月22日に現行利率水準〔固定2.9%・見直し2.0%目安〕で全面再計算)
- 利率固定方式・利率見直し方式の直近の適用利率(JASSO貸与利率一覧で確認)
- 第一種+第二種の併用時の合計返還負担と返済スケジュール
- 大卒初任給の手取り目安と各ケースの返済負担率
- 減額返還(4択・通算15年上限)・返還期限猶予・返還免除・延滞リスクの概要
調べられなかったこと
- 所得連動返還方式の具体的な計算式と返還額の推移(JASSOが計算式を公開していないため)
- 繰り上げ返還した場合の利息軽減効果の具体的な計算
- JASSO返還シミュレーターの計算結果との詳細な照合
- 延滞者数・延滞率の最新統計
- 実際に返済中の人の家計実態(統計データが限られている)
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