貸与型奨学金を借りるかどうか迷ったとき、「月々いくら返すことになるのか」が一番気になるところだと思います。
このサイトで調査したJASSO第一種奨学金(無利子)とJASSO第二種奨学金(有利子)について、借りた場合の返済額を具体的に計算してみました。
※ この記事の計算はすべて概算です。実際の返還額はJASSO奨学金返還シミュレーションで確認してください。
返済の基本ルール
まず、第一種と第二種の返済条件を整理します。
| 項目 | 第一種(無利子) | 第二種(有利子) |
|---|---|---|
| 利息 | なし | あり(上限年3.0%、近年の実績は0.5%〜1.0%程度) |
| 返還方式 | 所得連動返還方式 or 定額返還方式(選択可) | 定額返還方式のみ |
| 返還開始 | 卒業後7か月目 | 卒業後7か月目 |
| 最長返還期間 | 20年 | 20年 |
| 在学中の利息 | — | なし(利息は卒業後から発生) |
詳しくはJASSO貸与型奨学金 第一種・第二種 比較表をご覧ください。
この記事では定額返還方式で計算しています。所得連動返還方式(第一種のみ選択可)は、具体的な計算式がJASSOから公開されていないため、シミュレーションできませんでした。
第一種(無利子)の返済シミュレーション
第一種は無利子のため、返還総額=借りた金額そのままです。返還年数はJASSOの返還年数算出表に基づき、貸与総額に応じて決まります。
大学4年間(48か月)借りた場合の3つのケースを計算しました。
| ケース | 月額貸与額 | 貸与総額 | 返還年数 | 返還回数 | 月々の返還額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 最小額 | 20,000円 | 960,000円 | 10年 | 120回 | 8,000円 |
| 国公立・自宅通学 | 45,000円 | 2,160,000円 | 14年 | 168回 | 12,857円 |
| 私立・自宅外(最大額) | 64,000円 | 3,072,000円 | 18年 | 216回 | 14,222円 |
月額20,000円なら月々の返還は8,000円ですが、最大額の64,000円を借りると月々14,222円を18年間返し続けることになります。
無利子なので利息の心配はありませんが、最大額で借りた場合の返還総額は307万円です。22歳で卒業して返還を始めると、完済するのは40歳になります。
※ 返還年数はJASSO「奨学金返還年数算出表」に基づく概算です。
出典: 日本学生支援機構 返還期間(回数)と割賦金(2026年4月調べ)
第二種(有利子)の返済シミュレーション
第二種は卒業後に利息が発生します。在学中は無利子ですが、貸与終了後から利息がつきます。
利率は貸与終了時に決定され、近年の実績は年0.5%〜1.0%程度です(上限は年3.0%)。ここでは0.5%と1.0%の2パターンで計算しました。計算方法は元利均等返還(毎月の返還額が一定になる方式)です。
月額50,000円を4年間借りた場合
貸与総額: 2,400,000円、返還期間: 15年(180回)
| 利率 | 月々の返還額 | 返還総額 | うち利息 |
|---|---|---|---|
| 0.5% | 約13,800円 | 約2,492,000円 | 約92,000円 |
| 1.0% | 約14,400円 | 約2,585,000円 | 約185,000円 |
利率が0.5%から1.0%に上がると、月々の返還額は約600円の差ですが、15年間の利息総額は約9万円から約19万円へ倍増します。
月額80,000円を4年間借りた場合
貸与総額: 3,840,000円、返還期間: 20年(240回)
| 利率 | 月々の返還額 | 返還総額 | うち利息 |
|---|---|---|---|
| 0.5% | 約16,800円 | 約4,036,000円 | 約196,000円 |
| 1.0% | 約17,700円 | 約4,238,000円 | 約398,000円 |
月額120,000円を4年間借りた場合(最大額)
貸与総額: 5,760,000円、返還期間: 20年(240回)
| 利率 | 月々の返還額 | 返還総額 | うち利息 |
|---|---|---|---|
| 0.5% | 約25,200円 | 約6,054,000円 | 約294,000円 |
| 1.0% | 約26,500円 | 約6,358,000円 | 約598,000円 |
最大額の120,000円を利率1.0%で借りた場合、20年間で支払う利息は約60万円になります。
※ 利率は貸与終了時に決定されるため、この記事の計算とは異なる場合があります。正確な返還額はJASSO奨学金返還シミュレーションでご確認ください。
出典: 日本学生支援機構 奨学金の返還(2026年4月調べ)
第一種+第二種を併用した場合
第一種と第二種は併用して借りることができます。併用した場合、卒業後は2つの返還が同時に走ります。
第一種 月額45,000円 + 第二種 月額50,000円の場合
在学中の貸与月額: 合計95,000円
| 項目 | 第一種(無利子) | 第二種(利率0.5%) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 貸与総額 | 2,160,000円 | 2,400,000円 | 4,560,000円 |
| 返還月額 | 12,857円 | 約13,800円 | 約26,700円 |
| 返還年数 | 14年 | 15年 | — |
| 返還総額 | 2,160,000円 | 約2,492,000円 | 約4,652,000円 |
卒業後の返還スケジュールはこうなります。
| 期間 | 返還中の奨学金 | 月々の返還額 |
|---|---|---|
| 卒業後1〜14年目 | 第一種+第二種 | 約26,700円 |
| 卒業後15年目 | 第二種のみ | 約13,800円 |
14年間は毎月約26,700円の返還が続き、第一種が完済した後も第二種の返還がもう1年残ります。
手取り月収に対する返済負担
返還額が実際の生活でどれくらいの負担になるのか。大卒初任給の手取りと比較してみました。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2025年の大卒初任給は約228,000円です。社会保険料(約15%)と所得税・住民税を差し引くと、手取りは約180,000円が目安になります。
| ケース | 月々の返還額 | 手取りに占める割合 |
|---|---|---|
| 第一種 20,000円(最小額) | 8,000円 | 約4.4% |
| 第一種 45,000円 | 12,857円 | 約7.1% |
| 第一種 64,000円(最大額) | 14,222円 | 約7.9% |
| 第二種 50,000円(利率0.5%) | 約13,800円 | 約7.7% |
| 第二種 80,000円(利率0.5%) | 約16,800円 | 約9.3% |
| 第二種 120,000円(利率0.5%) | 約25,200円 | 約14.0% |
| 併用 45,000円+50,000円 | 約26,700円 | 約14.8% |
新卒の生活費の参考として、総務省「家計調査」による単身勤労世帯(34歳以下)の平均支出を見ると、家賃が約40,000〜60,000円、食費が約35,000〜45,000円、光熱費・通信費が約15,000〜20,000円です。
手取り180,000円から家賃50,000円・食費40,000円・光熱通信費18,000円を引くと、残りは約72,000円です。ここから奨学金の返還額を引いた金額が、その他の支出に使えるお金になります。
※ 初任給は企業規模・業種・地域によって大きく異なります。上記はあくまで全国平均の目安です。
出典: 厚生労働省 賃金構造基本統計調査(2026年4月調べ)
返済が困難になった場合
JASSOには、返還が困難になった場合の救済制度がいくつか用意されています。
減額返還
月々の返還額を1/2または1/3に減額し、そのぶん返還期間を延長する制度です。返還総額は変わりません。
例えば月々12,857円の返還を1/2に減額すると、月々約6,429円になりますが、返還期間が14年から28年に延びます。
返還期限猶予
経済的に困難な場合や傷病の場合に、返還を一定期間(最長10年)猶予できる制度です。猶予期間中は返還が止まりますが、猶予終了後に返還が再開されます。
返還免除(大学院・第一種のみ)
大学院で第一種奨学金を借りた場合に限り、特に優れた業績を挙げたと認められると、貸与額の全額または半額が免除される制度があります。学部生・第二種には適用されません。
延滞のリスク
返還を延滞すると、延滞金が課されるほか、個人信用情報機関に登録される場合があります。これにより、クレジットカードの作成や住宅ローンの審査に影響が出る可能性があります。
出典: 日本学生支援機構 返還が難しくなった場合(2026年4月調べ)
調べてみて気づいたこと
無利子でも金額は大きい
「第一種は無利子だから大丈夫」と思いがちですが、月額45,000円を4年間借りると総額は216万円です。利息がないのは確かに有利ですが、216万円という金額そのものの重さは変わりません。「無利子=負担が軽い」ではないということを、計算して改めて実感しました。
利率0.5%と1.0%の差は小さくない
第二種の月額80,000円のケースで、利率が0.5%から1.0%に上がると利息総額は約20万円から約40万円へ、ほぼ倍になります。「1%未満なら大した差はないだろう」と思っていましたが、20年間の返還では小さな利率の差が大きな金額の差になることがわかりました。
最大額を借りると手取りの約14%が返済に消える
第二種の最大額(月額120,000円)を4年間借りると、毎月約25,200円の返還が20年間続きます。これは新卒の手取り月収の約14%に相当します。家賃と食費と光熱通信費を引いた残り約72,000円のうち、さらに25,200円が返還に消えるので、自由に使えるお金は約47,000円になります。
併用すると返済の終わりが見えにくい
第一種と第二種を併用した場合、2つの返還期間がずれます。「第一種が終わったと思ったら、第二種がまだ1年残っている」という状態になり、「完済」の時期がわかりにくくなります。併用を考える場合は、両方の返還期間を事前に確認しておく必要があると感じました。
所得連動返還方式は計算できない
第一種では「所得連動返還方式」を選ぶことができ、所得が低い時期は返還額が少なくなるという制度です。しかし、具体的な計算式はJASSOから公開されていません。つまり、卒業前の時点では「所得連動を選んだら月々いくらになるのか」を事前にシミュレーションできません。これは調べていて困った点でした。
調査ノート
調べたこと
- JASSO第一種(無利子)の定額返還方式による返還年数と返還月額(3ケース)
- JASSO第二種(有利子)の元利均等返還計算(3ケース × 2利率)
- 第一種+第二種の併用時の合計返還負担と返済スケジュール
- 大卒初任給の手取り目安と各ケースの返済負担率
- 減額返還・返還期限猶予・返還免除・延滞リスクの概要
調べられなかったこと
- 所得連動返還方式の具体的な計算式と返還額の推移(JASSOが計算式を公開していないため)
- 利率固定方式と利率見直し方式それぞれの直近の具体的な利率
- 繰り上げ返還した場合の利息軽減効果の具体的な計算
- JASSO返還シミュレーターの計算結果との詳細な照合
- 延滞者数・延滞率の最新統計
- 実際に返済中の人の家計実態(統計データが限られている)
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